SNS選挙に潜む政治の劣化
今夏の7月に行われた参院選は、SNS選挙だったと言われている。SNSを前面に出して、選挙選の主力にした。
これは、今に始まったことではない。しかし、ここまでに選挙を支配したのは初めてだろう。SNS選挙の全国的で本格的な始動である。そして、これは今後も長く続き、元に戻ることはないだろう。特に、ふだんSNSに親しんでいる若者の間に広まっているからである。
その結果は、日本の政治に、いわば歴史的な大変革を引き起こすだろう。このSNS選挙によって自民一強時代は終わった。多党化を引き起こし、与党の半数割れを起こした。
このSNS選挙には、いくつかの欠陥がある。われわれは、SNS選挙に潜む欠陥を、注意深く矯正しなければならない。
初めに、その実態を見てみよう。下の図がそれである。
この図は、7月の参院選の比例区について、主要な政党ごとの得票総数と、その内わけの、SNSを投票の参考にした人数である。
総数は総務省の発表したもので、誤りがあれば再集計になる。それ程までに誤差は小さい。内わけは、時事通信の出口調査の結果から推計したものである。
この図には、前回の衆院選比例区の得票総数も描いている。これと今回の得票総数を比べてみよう。自民や維新などの既成政党は、それぞれ得票数を減らし、国民や参政などの新興政党は、増やしている。その内わけであるSNSを参考にした投票数を、あわせて見てみよう。
ここには明らかな因果関係がある。つまり、SNSなどの広報活動に多くを注力した政党は、それが増幅されて得票総数が増えたように思われる。
さて、SNS選挙には重大な問題が潜んでいる。それは、政党の基本政策に賛同して投票したのではない、という問題である。
つまり、税金を僅かばかり下げるとか、僅かなカネをばら撒くとか、表面的で浅薄な広報の目くらましに幻惑されて投票したのではないか。
そして、それを報道機関が囃し立てている。労働政策や経済政策や社会政策や外交・安保政策などの基本政策は隠している。そういう問題が潜んでいる。
つまり、税金を数万円ほど少なくするから、軍備拡張を容認せよ、という選挙になっている。
この問題点を、社会科学として指摘すれば、それは政策はもちろんのこと、報道における階級性の欠落にある。つまり、こうである。
SNS選挙は、SNSを動画サイトを含めて視聴率を唯一で最重要なものと考える。その理由は、利益を最大化するからである。そのためには、何もかも犠牲にする。
それは、誰の利益か。いうまでもなく、資本家の利益である。そのために、多くの政党と報道は何でもする。
くしくも、先週末に石破 茂首相が言った。戦前の戦争報道についてである。
日中戦争についてであるが、初めのうち、報道機関は、侵略への批判もなく、日本軍が勝った勝った、といって無邪気に囃し立てていた。やがて、そうした報道が新聞の売上高を伸ばし、資本家の利益になることに気づいた。そうして、戦争賛美にのめり込んでいった。その結果、日本は滅亡の淵に立つことになった。
いまのSNS選挙は、こうした危うい状況にある。議会制民主主義の劣化、などというナマ優しいものではない。
だからといて、SNS選挙を全面的に否定することはできない。活発な議論は、民主主義の原点である。だから、商業主義に陥るのではなく、したがって、資本家に奉仕するのではなく、国民の大多数である農業者や労働者に奉仕するように改革すべきである。
SNS選挙の時代になって、また、多党化が避けられない時代になって、農村はどう変貌するのだろうか。その中で、農政はどのように展開するのだろうか。注意深く監視していかねばならない。
(本稿は資料の収集について AI(ChatGPT) からの貴重な助言を得た)
.(2025.10.14 JAcom から転載)