北東亜細亜共同体論

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米価崩落のXデーに備えよ (2025.05.06)

米価崩落のXデーに備えよ

 米価高騰が続いている。供給量が少ないからだろうか。それもある。政府は、今後、毎月10万トンの備蓄米を市場へ放出するという。年間消費量は702万トンだから僅か5日分にすぎない。あとの25日は今まで通りになる。多くのコメ業者は、この程度では米価はまだまだ上がると予想している。

 先行き上がると予想している多くの業者は、いま安く売るよりも、あとで高く売るほうが利益が多くなると考え、倉庫に積んでおいて、市場へ出そうとしない。そうしないと、社長は出資者から罷免される。だから、誰も非難できない。

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 そもそも、それが市場原理である。こうした市場原理でコメ経済を運営することは、これまでの農政の基本姿勢だった。

 いまさら、政府がこうした状況をみて、米価を下げるために、高く売ろうとしている業者に対して、早く安く売れといっても、それは無理である。今の政府は、市場に介入するな、と大資本中心の財界から厳しく言われている。政府は、財界からの政治資金に依存しているので、それに逆らえない。

 このように、政府は市場に一切介入しない市場原理主義農政を堅持している。だから国民から非難されても、業者に対して、あれこれ言う法律的な権限を持っていない。膝を折って懇願するか、見苦しい泣き言をいうしかない。だから、哀れにも国民から非難され続けている。

 いまの米価高騰問題を解決するには、政府が市場原理主義農政を捨てるしかない。その上で、市場へ介入して解決するしかない。

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 いまのコメ経済は、国全体の将来を見据えたうえ、供給量と需要量がどうなるか、で決まるのではなく、現物市場での、目先の供給量と需要量で決まるようになっている。市場原理主義は「今だけ」というのが特徴である。

 米価は国民が、明日食べるコメをどう安く買うか。業者は、そのコメをどう高く売るかで決まる。つまり、将来の需給を考慮しないで、目先の需給だけで決まっている。

 将来の需給を見たいのなら、現物市場ではなく、先物市場で見るしかない。先物市場は将来のコメ経済を、しっかりと見据えている。先物市場の見方を聞こう。国民は将来のコメ経済を憂いているのである。

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 先物市場には「上り100日、下げ3日」という格言がある。米価の高騰は、やがてアッという間に崩落するという格言である。その日が来るXデーはいつになるか。

 ブラック・マンデーのように、ある日突然やってくるだろう。まだまだ遠いと思われるが、今すぐに対策を準備し、その日を早く察知して、早く収拾しなければならない。「山高ければ、谷深し」という格言もある。

 先物市場を見てみよう。

 上の図は、堂島取引所のコメの先物価格を示したもので、6月限で昨年8月から先日の5月2日までのものである。

 この図をみると、最近1か月半の間、2万6、000円(玄米60kg当たり)の近辺で、上下に小さく動いている。今後、上がるのか。下がるのか。不気味ともいえる。

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 米価は下げればいいという訳ではない。下げれば離農が加速し、生産量が減り、食糧自給率が下がり、食糧安保が根元から崩壊する。

 だからと言って上げれば、消費者のコメ離れが加速して、小麦の輸入量を増やすことになる。食糧自給率が下がり、食糧安保は崩壊する。

 この迷路から脱出するには、消費者米価は安く、生産者米価は高く、という二重米価制を採るしかない。

 それは、政治の市場への強力な介入である。市場原理主義の呪縛からの解放であり、市場原理主義農政との決別である。

 そして、それは、国民の生存に関わる安全保障のためである。カネを惜しんではならない。財源をどこに求めるか、などという矮小な問題ではない。政府の予算編成の第一優先順位におくべきことである。

 逡巡していたら、国民から手痛い反撃にあうだろう。

 7月の参院選は近い。熱い論争を期待しよう。

(2025.05.07 JAcomから転載)

 

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