幻のコメ輸出
●コメ輸出政策は国を誤る
コメを増産して、ドンドン輸出すればいい、という俗論が白昼堂々と罷り通っている。なるほど、それはいいことだ、と思う人が少なくない。
鈴木憲和農相も、高市早苗首相も、この考えに取り憑かれているようだ。そして、この考えを農政の基本に据えている。
本稿は、この考えは世界のコメ貿易の実態からかけ離れた、幻想であることを示そう。
この政策は、日本の農業をますます縮小させ、第3の武器と言われる食からみた安全保障を、危殆に陥れるものである。
●日本のコメ輸出量は、世界の1.5%しかないし、増えてもいない
はじめに、世界のコメ貿易の実態の中で、日本のコメ輸出の状況を見てみよう。下の図が、それである。

この図の資料は、アメリカ農務省の Rice Yearbook の電子版で、2008-2024年までの日本のコメの輸出量の部分を、色を付けて、そのまま切り張りしたものである。
これを見ると、最近の2024年の日本のコメの輸出量は9.0万トンだった。この年の世界の輸出国の輸出量を見ると、合計で5、849.9万トンだった。だから、日本のコメ輸出量の割合は、割り算して0.0015である。僅か0.15%に過ぎない。
また、もう1つ、この図で示していることは、日本の輸出量が増えていないことである。これが実態である。
コメ輸出論は、ここから、目を外らしている。そして、頭の中の幻を追っている。
●30年続いた「攻めの農政」の失敗に目を覚ませ
頭の中の幻を、勝手気ままに追うのは自由である。だが、こうしたコメの輸出論は、30年前から「攻めの農政」というカラ元気な名前で農政の柱にし続けてきたものである。そして30年経ったいま、その成果がこれである。30年間も失敗し続けてきたのである。
そうして今も、この幻を追い続けている。
政府は、米の輸出量を2030年までに2024年の実績の約8倍にすることを、昨2025年4月に閣議決定した。だが、この図が示していることは、それが実現不可能な幻に終わる可能性が、きわめて高いことを示している。
いい加減で、目を覚ましたらどうか。皆で揺さぶって目を覚まそう。
●日本のコメは、国際的には不美味で高価
以上で見てきたように、コメの輸出政策は、コメ政策の主柱として唱え始めてきてから30年間続けてきたが、未だに輸出量を増やすことが出来なかった。これは、明らかな失敗である。理由は何か。
失敗の理由は、別稿で詳論する予定だが、次の2つである
1つは、日本のコメの品種はジャポニカで、日本以外の国では不美味と評価されている。世界のコメの品種の主流はインディカで、これが美味とされている。ジャポニカと対照的で、細長くパサパサとしていて、香りが強いコメである。
もう1つは、日本のコメが高価なことである。その原因は、高賃金社会であるにもかかわらず、社会的および歴史的な理由によって、大規模機械化が不利だからである。
●日本のコメは、国際市場では勝てない
以上で見てきたように、日本のコメは国際的にみると不美味で高価である。国際市場の厳しい競争の中で、不美味で高価なものを買う国はない。これでは勝てない。
これでもコメの輸出をコメ政策の基本に据えるのか。評論家よ、政治家よ、目を覚せ。
いま日本は、消費者のコメ離れによって、また農業者の脱農によって、食糧安保の危機にあるのだ。
. (2026.03.23 JAcom へ加除修正して転載予定 )