図解・・・コメは家庭内で主食の座を守っている
●米価高騰の短期でみた影響は限定的
風薫る5月が去って、今日からは6月。気象庁は今夏の猛暑を予報している。この猛暑の膨大なエネルギーを、豊かな食糧エネルギーに変えるための社会体制を整えることは、農政の第1義の責務である。
さて、コメの需給を、やや長期的に見てみよう。今度の米価高騰は、いったいコメの需給にどう影響したか。そうして今後、どのような影響を及ぼすか。
下の図が、それを説明している。「図は何よりも雄弁である。」 これは、フランス文学にも親しんでいた恩師の、高橋 裕先生の教えである。
上の図は、長期的に見た最近の家庭内のコメ需給について詳しく見たものである。図の中に青丸と赤丸の2種類の丸があるが、青丸はコメの家庭内消費量で、赤丸は米価である。それを、2000年1月から先々々月の2026年3月まで示したものである。まるで無関係のグラフのように見える。しかし、消費量と価格だから無関係である筈がない。
資料は、政府の「家計調査」である。統計学に厳格に基づいて、約8、000世帯にお願いし、家計簿をつけてもらって、その集計結果を公表したものである。速報性は劣るし、上層家庭に偏奇している、という批判はあるが、第一級の資料である。いい加減な資料である筈がない。
この図は、今度の米価高騰について、何を雄弁に語っているか。
●短期的影響は限定的だが・・・
図を、もう少し詳しく説明しよう。赤丸の米価は米価指数をCPI(総合消費者物価指数)で実質化した実質米価である。
青丸の需要量は、家計で購入したコメの金額を米価指数で割り算したものである。それを世帯人数で割り、さらに、閏月と大の月・小の月の日数で調整した。それでも顕著な月ごとの変動があるので、最も単純ではあるが、単純平均法で月変動を除去した。
そうして、米価も需要量も、2000年を100にした指数で表した。
縦軸は、2つとも対数目盛にして、比較し易くした。だから、上下への同じ巾の変化は、同じ率の変動になる。
はじめに、この図をみての結論を言ってしまえば、今度の米価高騰によるコメ需要への短期的な影響は、家庭内でみると限定的である。しかし、長期的な影響は、食糧安保に関わる重大な影響が予想できる。政治の出番である。
●コメ需要の長期的減退は続いている
さて、この図をさらに詳しく見てみよう。
米価の、2024年に始まった高騰は図で示した通りである。
ここで注目したいのは、米価の高騰にも関わらず需要量が顕著には減らないことである。何事もないように、いままでの減少を、そのまま続けている。これは何を意味するか。
3000年前から続けている主食の座を守っている、ということか。そして今後、米価の高騰が続いても、需要量は顕著には減らないことを続けるか。
注目すべき問題は、米価の高騰が続いても、需要量の減り方は顕著ではない、とはいうものの、今まで通りに減り続けていることである。しかもそれは、決して緩やかな減り方ではない。図で示したように、25年間で約35%の減り方である。3分の1も減ってしまったのである。
これが今後も続いたらどうなるか。
逆の場合はどうか。米価の高騰が終わって、下落しても需要量は増えないのではないか。そうした危惧もある。
●少子化や外食の影響はない
ここで、あらかじめ予想される反論を断っておこう。
1,は少子化の影響である。本分析では、世帯人数で割り算している。だから、織り込み済みである。
2.は外食が増えたことの影響で、家庭内でのコメ消費量が減ったのではないか、という反論である。だが、予備的分析によれば、この期間、パンやメンの家庭内消費量は減っていない。
これに加えて、人口減少がある。これは、今後のコメ需要量の減少の大きな原因になるだろう。この点について、本論考では、織り込んでいない。つまり、実際には、本論説で検討した以上の減り方で減るだろう、ということである。
●コメをパンやメンにして食糧自給率の向上を
このように、コメの需要減少は、長期的にみると、看過できない状況にある。どうしたらいいか。
このまま政治が無為無策でいれば、食糧安保は危機に陥る。コメは食糧自給率をかろうじて38%に保持している最後の砦である。ここが崩れたら食糧自給率は1桁になる、というのが鈴木宣弘教授など専門家の推計である。
こうした事態を回避する責任は政治にある。鈴木憲和農水相がいうように、「需要に応じた生産」などと、需要に責任を負わせる、無責任な農政ではない。食糧自給率を上げるためには、コメの生産量を増やし、政治が需要を創り出す、という責任を負った農政に転換するしかない。いわば「生産に応じた需要の創出」である。主客を転倒するのである。主食で余ったら、パンやメンにして、小麦の輸入量を減らせばいいのだ。
(本稿の作成にあたり ChatGPT から適切な示唆を得た ここに記して篤く謝意を表したい)
. (2026.06.01)