北東亜細亜共同体論

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図解・・・穀物の食味は風土で決まる (2026.05.21)

図解・・・穀物の食味は風土で決まる

●世界の穀物消費の地帯性
 世界の食糧消費を見ると、摂取する食糧エネルギーを、主にコメに求める地帯と、コムギに求める地帯とがある。
 そのことを地図で示したものが、下の図である。

 この図は、主な食糧エネルギー源である穀物の消費量の大きさと、その内訳を、コメとコムギとその他の穀物の3つに分けて、地帯別に見たものである。資料はFAOのSTATと、農水省の食料需給表である。消費量の大きさは、図の面積に比例させた。
 面積が最大な地帯はアジアである。これは、穀物消費量が最大であることを意味している。また、穀物消費量の中で、コメの消費量割合も半数を超えて最大である。その理由は人口が多いからだけではない。穀物の多くを直接食べているから、という理由もある。
 アジア以外の他の地帯は、多くの穀物を直接食べるのではなく、いったん家畜の飼料にして、その肉を食べている。ちなみに、西欧には「主食」という言葉はない。肉やイモも、食糧エネルギー源として、大量に食べているからである。
 ここでは、穀物を直接食べている分を考察の対象にする。

●日本外交のアジア、アフリカのコメ作りに対する貢献
 その前に、関連する挿話をいくつか。
 第2次大戦後、日本はアジアで「緑の革命」を起こした。そうして飢餓を未然に防いだ。その資金源の多くは日本が拠出した。
 また、アフリカに対して、日本は稲作技術の手厚い援助を行った。そうしてコメの大産地にした。
 その前には、日本は台湾に潅漑用のダムを作ってコメを普及した。その指導者だった八田與一先輩の銅像が、いまもダムの近くに建っていて、現地の農業者から感謝されている。ちなみに、土木工学を英語ではCIVIL ENGINEERINGといっている。
 これらは、何れもアジア、アフリカのコメ作りに、日本が大きく貢献した事実を表している。その結果が、上の図である。
 そしてこれらは、何れも日本外交史の上に、燦然と輝く金字塔である。いまの日本外交に期待したいのは、こうした先人たちの外交である。日米の軍事同盟を強化するための武力の増強ではない。

●土地の人口扶養力が味覚を決める
 さて本題に戻ろう。
 いったい何故、ある地帯は、コメを作って食べているし、他のある地帯は、コムギを作って食べているのか。
 日本人は、コメで作ったご飯が旨いからコメを作って食べている。フランス人は、コムギで作ったパンが旨いからコムギを作って食べている。そのように考えている人が多い。だが、この理由は、あまりにも浅薄である。
 理由は、旨いか不味いか、という食味ではない。理由は、土地の人口扶養力である。
 温暖で湿潤な地帯では、コメのほうが人口扶養力が大きい。寒冷で乾燥する地帯では、コムギのほうが人口扶養力が大きい。
 では、なぜ人口扶養力か。
 人口の大きさは、労働力の大きさである。それを私的に見たとき、家庭の裕福さである。そして何よりも、その家庭の幸福の大きさである。
 だから、人口扶養力の大きい穀物を食べているのである。そして、それを食べているうちに、その穀物が旨くなるのである。
 このように、因果関係は逆である。旨いから食べるのではなく、長い間お父さんが作って、お母さんが炊いたご飯を食べているうちに旨くなるのである。つまり、土地の人口扶養力が、人の味覚を決めているのである。それが数千年もの長い間、何世代にも亘って続けられてきた。だからDNAに深く組み込まれていて、連綿と受け継がれてきたのだろう。
 また、人口の大きさは国力の大きさであり、国家の武力の強さとしての兵士の数の多さである。それは、以前は最高の国家機密だった。ちなみに、日本では人口調査を、いまでも「国勢調査」といっている。
 また、ちなみに、北海道開拓使は、当初、コメ作りを禁止した。当時の技術のもとで、北海道でコメを作っていたのでは、土地の人口扶養力が小さかったからである。それでは、屯田兵の数が増えないからである。

●味覚は風土で決まる
 さて、土地の人口扶養力といっても、それは自然条件だけで決まるものではない。未来永劫に不変のものではない。人間の営為によって、また、その結果である技術の進展によって、さらに、その結果である社会の変貌によって、歴史的な進化を続ける。つまり、和辻哲郎先生がいう風土によって決まるものである。
 このように考えると、味覚は風土で決まることになる。
 この認識を欠いたままで、いま、コメをめぐる政策論議がなされている。日本のコメは、世界中で一番旨いから、輸出する余地は充分にある、という客観性を欠いた認識に基づく輸出振興論である。
 この主題は次回以後の、この<図解>で続ける予定である。
.                   (2026.05.18)

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